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テレワークにおける時間の価値

6月に入ってから続々とオフィスへ出社する人も増え、今では外出自粛前と変わらないくらい街の人出が戻っていますね。

個人的な考えとしては、それが経済面で大きなダメージを与える、さらに個人の生活にもダメージを与えることになるとは十分に分かっていますが、業務上・生活上どうしてもという場合を除き、不要不急な外出は今でも控えるべきだと思います。
ましてや、ディズニーランド・シーの開園に大喜びして大勢が押し寄せて、街では飲み会などで飲食店が満席になっている様子を見ると、この人たちは何を考えているのだろうと不思議になります。

さて、企業では変わらずテレワークの人も少なくはないですし、慣れない中でテレワークという仕事の進め方に、様々な困難を経験したり、ストレスも多く感じられているかと思います。

逆に、テレワークなどでは仕事にならないために、出社をせざる方も多かったかと思います。
私自身も、そういったお客様先には、訪問をすることも多かったため、1日に数ヶ所を移動する日々でした。
今となっては、怖いくらいに乗客の少ない電車内や街中が、人もほとんどおらず逆に安心だったなぁと思い返したりもします。

そこで、こういう外部環境の中で、テレワーク下での時間に対する価値について考えてみました。

私自身は、プログラマ・SE、コンサルタントとして仕事をしてきて、お客様先であったり、外で仕事をするケースも多く、自社に戻っても固定席はなくフリーアドレスな席という企業に属してきました。
また、仕事柄、PCさえあれば仕事ができるので、電車内や自宅で仕事をすることも度々ありました。

このため、ずっとテレワークという形態は全く違和感もありませんでしたし、何らストレスがあることでもないのですが、今回の外出自粛に伴うテレワークに対する世の中の皆さんの考えを聞いていると、それが特殊なことなのだと改めて気づかされました。

テレワークの価値は、テレワークに費やした時間に対して、それによって生み出された成果で評価できます。(「V=F/C」というVEでの価値式そのもの)
しかし、テレワークに費やしている時間は、出社して業務している時間と変わらないはずなので、単純な価値式では、価値の高低を論じることができません。

なぜならば、価値が同じであるならば、テレワークだからの問題であったり、ストレスなどが、様々なメディアで取り上げられないでしょうし、世間での困りごとについては、それほど声高にならないと思うからです。

そこで、別の視点を考えてみました。
まず、テレワークで生み出される成果(業務実績)・効率化・可能性拡大。
そして、”オンタイム”・”オフタイム”という切り口が考えられます。
費やす時間に対する感覚という観点も必要になります。

1点目のテレワークにより生み出される成果について考えてみます。

テレワークによって、距離という障壁が無くなったことが1番大きな変化ですね。
例えば私のようなコンサルタントの仕事をしていると、今まではせいぜい1日に2社を訪問できるかどうかというペースでした。
それが今では1日に3社以上、4回、5回というミーティングを実施できるのです。
移動時間、移動による疲労などから開放されるわけです。

コンサルタントのような仕事以外でも同様かと思います。
テレワークというスタイルが広まったことによって、オンラインミーティングという形態が広まり、効率的な時間の使い方ができるようになりました。

もちろん、オンラインよりも対面の方が良い、という方も多いです。
特に中高年層に多いように思います。若い世代は、制約があると、何とかして元に戻そうという思考ではなく、生じた制約の中でいかに効率的に・楽しみながら工夫をしていっています。
確かに、直接顔を合わせた方が、細かな所作であったり雰囲気の感じ方が異なります。
では、それによって生み出される成果に大きな差があるのでしょうか?
私は、確かに差はあるものの、大きなものではないと考えています。

「行間を読む」ということが日本人の得意なコンテキストフルなコミュニケーションで、お互いの仕事のすき間をあうんの呼吸で埋めたり良い面があります。
しかし、実はその弊害の方が良くないと、私は考えています。
結局は、抜け漏れ、誤解などを生み出すことも少なくはなく、それによってダメージ・ロスを生み出してしまうからです。

特に、社内ならまだしも、外部の会社の人間に対しても「行間を読む」ことを期待したコミュニケーションをしていると、お互いに大きな被害にもなります。(特にシステム構築の現場では起こりがちでもあります)

さらに、外出自粛だからこそ、グローバルにまでビジネスの場を広げて大きくビジネス拡大をしているケースも生まれています。
オンラインでのコミュニケーションがこれまで以上に普及が進み、物理的な距離という制約が無くなり、今までの制約が取り払われたわけです。
無くなった制約があるのであれば、それを活かしたチャンスも生むことのできる余地があります。

2点目の「オンタイム」と「オフタイム」についてです。

自宅でテレワークをしていると、オン/オフの切り替えが困難という話をよく耳にします。
特に小さな子供のいる家庭では、仕事中かどうかにかかわらず、子供の世話などが発生するかと思います。これは切り替えが難しいのは致し方ない。

しかし、本当に切り替えが困難な方は限定的なのでは無いかと考えています。
むしろ、家にいるからこそ、仕事以外の誘惑に負けてしまうケースが多いのではないでしょうか。
単に、リアルではないこと、今までと違う環境であることを言い訳にしていることが多いのでは。
制約が生じたのであれば、元に戻そう・元に戻りたいと考えるのではなく、現状に対応していくことが重要になります。

「オンタイム」の機能は《業務成果を残す》
「オフタイム」の機能は《休息を得る》です。
そもそも”切り替え”というものにこだわる必要があるのでしょうか。
これらの機能を達成することができれば良いわけです。
必ずしも9時~18時までが「オンタイム」であるべき、ということはありません。

また、テレワークをしている方の業務負荷は、出社している時と同じなのか?という疑問もあります。
テレワークなのだけれども、ほぼやることがない、時間が余ってしまうといった声も聞きます。

そもそも、必要以上の社員数を抱えている会社も多いのではないかなどということまで考えてしまいます。
《社会的責任を果たす》という企業の目的を考えると、それも社会貢献になるのかもしれませんが。

最後に3点目の費やす時間に対する感覚について考えてみます。

テレワークでほとんどの時間を自宅で過ごすことになります。
その中で、オンタイムとオフタイムが存在するわけです。

となると、これまでのオンタイム=出勤、オフタイム=自宅という様式が変化します。
今までは仕事先で過ごしていたオンタイム、今までは完全にオフタイムであった自宅が、オンタイムとしての在宅時間・オフタイムとしての在宅時間になるわけです。

すると、”オンタイムとして過ごす時間”、”オフタイムとして過ごす時間”から受ける感覚や価値が変わってきます。
感覚的ですが、今までは普通のことであった自宅でのオフタイムが、より大切なオフタイムだと感じることができるのではないでしょうか。
そして、自宅でのテレワークは、今まで以上に集中し、より効率的に業務をこなさなければという意識に変化するのではないでしょうか。

ということで、テレワークの価値を考えるには、単に、”テレワークに費やした時間”に対する”生み出された成果”だけでは測れないことが分かります。

次のような価値の考え方をすることになります。
V(価値) = F/C x ビジネスチャンスの拡大 x 時間への重み付け

トヨタ自動車では、開発部門だけでなく、製造のラインでさえ、テレワークできる余地はないのかを検討しているようです。
とかく、「元に戻そう」・「元に戻りたい」と考えてしまいがちですが、テレワークであるからこそ価値を上げることのできる余地もあるので、この制約ある環境に対応していく必要がありますね。

今後は、100%テレワークとまではいかなくても、それぞれの会社に合わせて、テレワークを取り入れた業務が当たり前になってくるという、昨年は、まさか今年このような仕事の進め方の変革が起きるとは思ってもいませんでしたね。
おそらく初のことですが、VE協会での部会(研究会)も、今年度はすべてオンラインで実施することとなりました。
お客様とのミーティングも、オンラインミーティングが当たり前になってきています。

色々な制約の多い状況ですが、どんどん楽しんで、新しい仕組みに取り組んでいけたらと思います。

[関連情報:(VEでいうところの”価値”とは視点が異なりますが)]
テレワークしている人、していない人 時間の価値にどのような違い?」-ITmedia

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