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アニマルウェルフェアとオリンピック

先月のことになりますが、オリンピックメダリストらがアニマルウェルフェアに関して、声明を発表しています。
声明は、東京都知事、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会へ嘆願しています。

オリンピックメダリストら9名が声明を発表。東京五輪の使用食材のアニマルウェルフェア求める

2年後の東京オリンピックでのアニマルウェルフェアの基準が低レベルすぎることに対する声明となっています。
この声明には9名のメダリストのみではなく、国内外の54団体が賛同もしています。

声明では、ケージフリー卵と妊娠ストールフリーの豚肉を使うよう求めています。
私としては、この2つの要望に絞るのではなく、もっと幅広く基準のレベルアップを求めても良かったのではないかと感じています。
ただ、幅広くしてしまうことでの影響を鑑みた結果なのかもしれません。

アニマルウェルフェアとは、「快適性に配慮した家畜の飼養管理」と定義されています。”快適性に配慮されていない”家畜は、大きなストレス下で飼育されます。そのような飼育環境で育った家畜は、正常な健康が保たれたものではなくなります。骨・筋肉の強度低下、脚の病気や循環器系の健康阻害などが起きてしまうのです。

また、こういった食材を摂取することにより、人体への悪影響が生まれるという研究結果も発表されています。筋肉、骨密度、免疫力、血糖値、心臓血管機能に影響するという内容です。さらには精神状態の変動にも関連するという内容も見られます。

さて、2020年には日本でオリンピック・パラリンピックが開催されるわけですが、オリンピック・パラリンピックでは、食材の調達基準が定められています。
世界的に注目もされる上に、世界中から人も訪れることから、影響力が大きい大会であり、社会的責任もより一層求められるためです。

しかしながら、日本では「アニマルウェルフェア」の考え方は浸透しているとは言えず、アニマルウェルフェア後進国なのが現状です。

農林水産省でもアニマルウェルフェアの考え方について提示されていますが、「最新の施設や設備の導入を生産者に求めるのではなく」などとも明記されており、2020年のオリンピック・パラリンピックまでに飼養環境を向上してきましょうね、といったレベルで述べられているのみです。
畜産農家への負担を懸念してのことなのかもしれません。

さて、”メダリストの声明”、”食材調達基準”、”アニマルウェルフェア”が、どのように結びつくのでしょうか。

東京大会での食材調達基準にもなっている、レベルの低い農林水産省の方針を許容してしまうと、大きなストレスを受けた家畜を食材として調達することになる。
→ 選手は、選手村での食事において、人体(身体能力)に悪影響があるかもしれない食材を使った食事を摂取しなければならない。
→ オリンピック・パラリンピックという舞台で最高のパフォーマンスを出すことを求めているにも関わらず、普段よりも品質の低い食事で過ごさなければならない。
→ メダリストらは、大会組織委員会へアニマルウェルフェアの改善を求めることになった。
という経緯になるわけです。

今回、メダリストらが声明を発表をしていますが、実は、2020年には、出場する選手だけでなく、アニマルウェルフェアのレベルが低い日本に、世界中から旅行者(応援者・観光客)が訪れることになります(オリンピック・パラリンピック選手だけでも1万人を超える人数になります)。

こうして訪れる世界中の人々にも質の悪い食材を提供することになるのが、日本の現状なのです。このままでは、無形文化遺産にも登録された「和食」にも傷が付きかねないのでは?

少なくともオリンピック・パラリンピックという世界中から注目される大会だけでも調達基準を見直し高く改めることは、今からでも遅くないのではないでしょうか。せっかく日本で開催されるというのに、大きな汚点を歴史に残すことにならないようにして欲しいと願います。

そして、農林水産省をはじめとし、日本全体でアニマルウェルフェアに対する意識付け・意識向上に繋がり、真に安心した食材を日常生活の中で食べていけるような社会を願います。

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