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稀勢の里関 引退とその価値をVE的に分析

横綱 稀勢の里関が引退されるとのこと。
各種のメディアの報道などを見ていて、 なにか違和感を感じてなりません。
自分でも「なんだろう?ん~~~。。。」と、自分の直感に疑問を感じたので、分析してみようかと思います。

相撲に関しては、それほど詳しいわけではありませんが、今回の引退を軸に、横綱引退について、VEの視点から、その”価値”というものを考えます。
VEにおいて、価値は次のような式で表されます。
 価値=機能(ファンクション) / コスト

本記事では、「横綱引退」というテーマについて、横綱(力士)・相撲協会・ファンの3つの視点から、その価値というものを分析していきます。

この価値について、まず、横綱(力士)視点から考えてみます。
機能・コストの面が、引退によりどのように変化したのか。

まず機能面では、次のような機能が果たされています。
引退ということは《力士を辞める》ということです。
“なんのため”に《力士を辞める》のか。
《横綱としての体面を保つ》、《強い姿の記憶を留める》という機能があるかもしれません。
その代わりに、《取組機会を失う》ことになるわけです。土俵に上がれなくなるというのは、力士自身にとっては大きな機能を失うこととなります。

分野は全然違いますが、昨年引退をされた歌手の安室奈美恵さんの引退の機能にも、このような機能がありました。
NHKの番組中で、引退の理由の一つに、声帯を壊した過去を挙げられていました。その事もあり、「ファンの方に、いい状態の安室奈美恵を思い出として残して欲しいなって」とおっしゃっていました。

そしてコスト面では、次のような変化があります。
《退職金を得る》《功労金を得る》《(力士としての)収入を失う》
協会からの給与や懸賞金など、力士の収入には色々と含まれますが、横綱ともなると相当な額になるようです。
(なお、退職勧告を無視もできるようなのですが、その場合は解雇となり、功労金を得ることもできなくなるようです)

また、別の収入を得る必要があるため、《(新しい)収入を得る》ための活動が必要になってきます。その収入を得るためには、引退後にどのような仕事をするのかにより、その開業費等が必要になってくるため、《支出を増やす》ことになります。
今回の稀勢の里関のような、横綱まで上り詰めたような方や、人気・話題性のある力士であれば、引退後の職にそれほど困ることもないのかもしれませんが、ほとんどの方は引退後の仕事に苦労されているようです。
これは、他のスポーツでも同様なのですが、若いうちから一つの世界で勝負をし続けてくるわけで、その枠から出た時には、様々な苦難・苦労が伴うわけです。

横綱(力士)視点での価値については、退職金や功労金というコストのプラスがあるものの、機能のマイナス、コスト面のマイナスになります。
価値算出の式に当てはめて、
価値 = 機能(マイナス) / コスト(マイナス)
となることから、やはり引退というのは、力士としての価値は大きく下がることになるわけです。

次に、相撲協会視点から分析してみます。

機能面では、
《力士を逃す》ことでもありますが、なによりも現在唯一の存在であった《日本人横綱を失う》という大きな痛手であることです。
《ファンを逃し》、《来場者数を減らす》という、望んではいない機能が発生してしまいます。
ただし、横綱視点でも挙げたように、相撲協会としての《対面を保つ》という機能も持っているため、横綱にふさわしくないのであれば、そのまま横綱に据えておくにはいかない訳です。

コスト面では、
日本人横綱がいなくなることで《来場者数を減らす》ことになるでしょうし、《ファンを逃す》ことにもなるため、《収入を減らす》ことになってしまうわけです。

ここでも、相撲協会視点から価値を見てみます。
価値 = 機能(マイナス) / コスト(マイナス)
やはり、協会にとっても、横綱を失うことは大きな価値の低下になることが分かります。

最後に、ファン視点から見てみます。

機能面では、
《相撲への興味を失う》または《相撲への興味を減らす》ことになるでしょう。
特に出身の茨城県牛久市や周辺の方々への影響はとても大きなことと想像できます。
《(未来を含めた)相撲人口を減らす》ことになるとも考えられます。
稀勢の里関、日本人横綱が不在になることで、力士を目指す子どもたちや学生の減少にも影響する可能性があるということです。

コスト面では、
《観戦機会を無くす》または《観戦機会を減らす》ことになると考えられます。
主にチケット代、グッズ代などへ影響してきます。
観戦のための旅費交通費、観戦時の食事代といった、直接には相撲に関連しない経済活動の減少にもなります。

そして、ファン視点からの価値です。
価値 = 機能(マイナス) / コスト(マイナス)
ここでも、価値の低下ということが分かります。

ここまで、3つの視点から、横綱の引退をテーマにして、VEにより”価値”を分析してみました。(本番のVE活動ではもっと詳細な分析をしますが、ブログ上でもありますので、簡単な分析になっております点、ご了承ください)

いずれの視点でも、横綱の引退というのは、大きく価値の低下を伴うことだと分かりました。
各視点での価値低下の程度は異なりますが、やはり横綱引退は大きな損失ですね。

ここまで見たように、VEで、モノ・コト(今回の場合は、「引退というコト」)を分析する際には、どの立場で対象を見るかにより、対象の価値が異なってきます。

通常、VEで問題改善をする際は、問題を感じているある側面からのみを分析していくのですが、今回のように、複数の立場から見た価値を統合して分析するテクニックも存在します。
なかなかVE以外の手法では見られないテクニックです。
このテクニックについては、また別の機会にご紹介したいと思います。

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