ラグビーW杯にみるスポーツの価値
アジアでの初開催となったラグビーW杯が始まり、日本でも盛り上がりを見せています。
日本代表も無事に初戦に勝利をし、次の試合以降への期待も高まりますね。
ラグビー(W杯)の価値、そしてスポーツの価値について述べてみたいと思います。
まず、チケット販売の状況からお伝えします。
8月には全試合のうちの9割のチケットが販売済みになるくらいでした。
私も観戦したいと強い想いを持っていましたが、正直「安い席もあるけれど、いい席は高いなぁ~ (><)」「どうせならいい見やすい席で観たいし」と迷っているうちに、W杯開催を迎えてしまいました。
地方スタジアムで対戦カードによっては2,019円という価格ですが、開幕戦の日本戦は最低価格15,000円、グランドを横から見れるスタンド席は最後列でも50,000円という価格設定です。
高めの価格ながらも、チケット販売が順調であったことは、それだけラグビーW杯の試合観戦への価値を感じている人が多かったということです。
そして、グッズ販売(物販)の様子です。
グッズ販売においても4年前のW杯の時の数倍の売上を達成しているようです。
レプリカジャージなどは、前回のW杯の時の10倍とも言われています。
物販でも特徴的なのは、開催前から「ビールは足りるのか?」という懸念がなされていたところです。
前回のラグビーW杯(イングランドで開催)では、サッカーのプレミアムリーグと比較してもビール消費が6倍にもなったようです。
ラグビーの試合が社交の場であったため、試合中だけでなく試合の前後にもビールを手にして交流を深める文化に由来するとのこと。
今回のW杯では、ヨーロッパなどでは一般的ではない会場での売り子も導入し、観戦しながらビールを飲むこともできるという仕掛けもされています。
テレビで試合を観ていても、スタンドにはレプリカジャージを来た観客が目立ちます。
そこそこの価格なのですが、試合観戦した後も着るのでしょうか。試合観戦の時のみ?
W杯が終わった後も、着ることはあるのでしょうか。
そして、7:3で、日本国内の人がチケットを購入しているとのこと。
チケット販売が好調で、3割も海外から観戦で訪日し、日本でも各地で試合が開催されることもあり、ホテルの予約が困難になっていると随分前から話題にもなっていました。
さて、ラグビーの価値の高まりは、どのように変化してきたのかを、VEという視点から考えてみたいと思います。
VEにおいて、”価値“は次のような式で表されます。
V(価値) = F(機能) / C(コスト)
(アメリカでは最近は「V = F / R(リソース)」という式で表されています)
C(投入したコスト)に対して、達成できるF(機能・ファンクション)が大きければ大きいほど、V(価値)が高いことを示しています。
W杯が始まるまでに、ラグビー日本代表が世界ランキング10位であったことを知っていた人はどのくらいいたのでしょう。
前回のW杯で南アフリカに勝利し大きく報じられた際に、日本代表がどのような結果を残したかまでを知っている人はどのくらいいたのでしょう。
チケットの売れ行きや、テレビを始めとするメディア等への露出機会だけでも、ラグビーへの注目が高まっており、人々が感じるラグビーの価値も高まっている状態だと感じます。
C(コスト)は、様々な人の時間や費用が多く投じられており、増加しているはずです。
しかし、その増加を上回るほどのF(機能)が向上しており、大きく価値が向上していると考えられます。
では、どのようにF(機能)が高まっているのでしょうか。
その点を詳しく見てみることで、価値の高まりを明らかにしたいと思います。
そのために、次のような式で説明をしてみます。
式中の
Fnは、期待値(良い結果を求める期待の度合い)
Ftは、結果(期待通りの結果かどうかの度合い)
を表しています。
単純に”F”という変数だけで表すには不十分だと考え、このような式を考え出しました。
Fnは、具体的には、日本開催(アジアでの初開催)、トップクラスのチームの試合を生・ライブで観戦できること、メディア露出(スポンサーCM、告知CM、ドラマなど)といったことが挙げられます。
さらに、前回のW杯では”史上最大の番狂わせ”とも言われた南アフリカ代表への勝利(当時、ランキングは日本13位、南アフリカ3位)、本W杯開始時はランキング10位といった要素も影響しているかと思います。
(ロシア戦に勝利した後、日本はランキングを上げて9位になりました)
Ftは、W杯での成績・各国代表の試合内容・結果を表しています。それが期待通りであるのかどうかという度合いです。
すでにランキング1位、2位のニュージーランド・南アフリカの試合が行われましたが、素人目にも全く別次元のプレイが多く見られ、とても興奮して観戦しました。
ニュージーランドの勝利となりましたが、トップ同士の試合には、迫力・スピードなど、ラグビーの魅力が余すところなく表れていました。
観客の方、テレビで観戦していた方、みなさんの期待通りの試合を観ることができ、そのプレイに驚き、感動し、興奮したかと思います。
まだW杯は始まったばかりですが、Fnが最も高まっている段階です。
Ftは、まだ数試合が行われた段階なこともあり、初期値に近い段階にあります。
「Fn / Ft」にの値が非常に高まっているため、現時点のラグビーの価値は非常に高い状態にあると言えます。
期待と結果は、結果次第でその後の期待値も変動します。
結局の所、どのような”結果”が残されるかで、価値が変動してきます。
また、価値は、時間の経過とともに変化します。
「W杯前」、「W杯開催中」、「W杯後」と変化します。
今後の各代表チームの結果、特に日本代表の結果次第で、①・②・③のいずれかにFが遷移していくことが考えられます。
特に日本代表が勝ち続けていった場合、①に近い曲線をたどって価値がより高まっていくことが考えられます。
逆に、日本代表がPool Cで敗戦した場合、②・③のような曲線をたどっていき、高まったラグビーの価値というのは、再び落ち込み下火になることも考えられます。
今回のW杯後、ラグビーの価値をいかに維持し続けるかが、今回興味を持ってくれたファンを引き留め、にわかファンから、本当のラグビーファンに定着させ、ラグビーを始める子供たちを増やし、ラグビーというスポーツを盛り上げていく鍵になります。
そのような点を踏まえると、今回、日本での開催は、日本のラグビー界には二度と無いチャンスなわけです。
キャプテンのリーチ・マイケル氏も、インタビューで同様のことを語っていました。
そのためにも、是非日本代表には頑張ってもらいたいです。
さて、ラグビーからは離れますが、時期を同じくして、バレーボールW杯も開催されています。
しかし、どうもラグビーに比べて盛り上げに欠けている感が否めません。
何が違うのでしょうか。
開催前の告知、特にスポンサーCMでの露出度に差があったように感じています。
日曜劇場で「ノーサイド・ゲーム」というドラマの放映があったことも、ラグビーの認知度を高めた上に、観ている人の心を惹きつけ感動を呼ぶストーリーに、興味を持った方も多かった可能性もあります。
同じW杯なのに、随分と差を感じています。
結果(Ft)は、選手に依存して決まりますが、期待(Fn)を高めるための手段には、様々な選択肢があり、全体をとおして、どのような方針・戦略を取るかでイベント開催時の価値を左右するとも言えます。
そして、来年に迫るオリンピック・パラリンピックでも同様の考え方ができるかと思います。