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日本ラグビー界の持続性コントロール

約1ヶ月半に渡り開催されていたラグビーW杯は、南アフリカの3度目の優勝で幕を下ろしましたね。
前回のW杯では3位になったのとともに、日本代表との試合は”スポーツ史上最大の番狂わせ”とまで呼ばれるほどの強豪ですが、映画”Invictus”で、アパルトヘイト後に初出場初優勝を果たして国内を統一していったことに思いを巡らせると、胸にグッとくるものがありました。

一方、準優勝となったイングランドは、前回大会で自国開催にも関わらず予選プール敗退の雪辱を果たすことができず、優勝を逃したことのにじみ出る表情の選手の様子には、こちらまで悔しさがあふれかえってきました。

国際統括団体ワールドラグビー(WR)の会長も「最も偉大なワールドカップ」と評価をされており、この大会が日本で開催されたというのは誇らしくもなりますね。

さて、初のアジア開催、しかも日本で開催されたことで大変盛り上がったわけですが、初の決勝リーグ進出・ベスト8で盛り上がって終わりではない点に、ラグビー協会およびW杯組織委員会の連携による、国内にラグビーを展開するための中長期的な計画に関心を持ちました。

W杯閉幕の翌日には国内トップリーグのチケット販売が開始される点です。

今回出場した強豪国の選手も数多く日本のトップリーグに参加することが決まっています。
W杯のテレビ中継の中でも、トップリーグ参加予定の選手の解説や画面表示で紹介がなされていました。

目的は、W杯での盛り上がりを途切らすことなく、そして、W杯で数多く増えたにわかファンを取り込み、《国内リーグの集客数を増やす》ため、《ラグビーファンを増やす》ためです。

トップリーグは来年1月から5月にかけて実施されます。
2ヶ月後の開催までの間に、W杯での盛り上がりを逃してしまっては、ラグビーの将来を閉ざすことにもなってしまいます。

そして、トップリーグが終わると、オリンピック・パラリンピックが開催され、7人制ラグビーや車椅子ラグビーの試合が行われます。
W杯・トップリーグと盛り上げ続け、このオリパラでのラグビーへの注目も集めていかなければなりません。
トップリーグが開催される頃には、オリパラでのPRも始まることでしょう。

さらに、日本のラグビー界は、その後の大きな計画が控えています。

2021年にはラグビーはプロ化されます。
7月にプロ化の構想が発表がなされ、11月中には基本構想の説明がなされるとのこと。

プロ化をするとなると、より一層のファンの増加、試合での集客増加が求められます。
チケット収益・グッズ販売収益・スポンサー収入・放映権などで、大きな収益を上げる必要があるからです。

というのも、ラグビーでは1チームあたり45名ほどの選手を抱えなければなりません。
さらに、今のトップリーグでは試合数が1チームあたり15試合しか開催されないのです。
(バスケットボールでは、1チームあたり13名、シーズンあたり60試合行われます)

さらに、国内ではラグビーの試合を開催できるアリーナは限られていることも、大きな課題とされています。
数万人の集客が可能なアリーナを新設し、これを試合数が少ないにも関わらず管理・運営していかなければならないためです。
数ヶ月前の時点では、サッカー(Jリーグ)のアリーナと共用できないかという案もあったようですが、サッカー以上に芝が荒れてしまうことや、試合が重ならないように共用できるのか疑問、などの反対意見も多かったようです。

ラグビーというスポーツでは、人件費や施設運営費などをはじめとする多くの運営費用をまかなわなければならないにも関わらず、収益を得る機会が限られているわけです。

大きなコストがかかる以上、収益をはじめとする様々な機能(ファンクション)を達成していかなければ、ラグビーの価値向上を望むことができません。

2021年以降までを見据えたラグビーの価値を向上させるためのステップが、世界で盛り上がったW杯が閉幕したと同時に始まっている。
この点に気づき、ラグビーの普及・発展を願うとともに、価値向上のためにVEを活用できないものかとも考えるに至り、この記事を書いています。

ラグビーW杯の日本開催が決定して以降、W杯開催、オリパラ、プロ化、さらなる普及と発展と、持続性をコントロールするための対策が取られています。
どの時点でどこまでの価値を達成するのか、機能(ファンクション)の達成タイミングとその度合いをうまくコントロールし、持続性あるラグビーの普及・発展がなされればと願っています。

VEでもプロセスコントロール法という、どのように価値を向上させていくのかを計画するための手法が存在しています。
どのような領域でも、単発で価値を上げるだけではなく、時間がかかる場合は、価値の程度をコントロールさせつつ、持続性を持たせて実行していく必要があるということがよく分かります。

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