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【講演レポート】「日本のプロスポーツを強くするスポーツ・マネジメント」〜Jリーグ、Bリーグの創造から、12のトップリーグの変革へ~

昨日(10/3/19)、川淵氏の講演を聞きに行ってきました。
「日本のプロスポーツを強くするスポーツ・マネジメント」〜Jリーグ、Bリーグの創造から、12のトップリーグの変革へ~
というタイトルでの講演です。

19:00-21:00という遅い時間でしたが、ほぼ満席、といっても会場となったグロービス経営大学院の学生が7割だったようですが。

日本ではまだまだ関心の低いテーマなのでしょうか。

「プロスポーツ」という視点だけではなく、いかに特定のスポーツ分野を活性化させるのかという面で多くのヒント・アイデアの得られる講演でした。

講演は、グロービス経営大学院の学長でもある堀義人氏の著書「創造と変革の技法」にもある5つのポイントに沿って進められました。
講演の後半は、堀学長との対談形式で、川淵氏の講演内容に対して、堀学長が深掘り、ご自身の疑問などを質問していくものでした。

5つのポイントというのは、次のとおりです。

  1. 可能性を信じ志を高く
  2. 多くの仲間を巻き込み組織を作る
  3. 勝ち続ける戦略を構築し実行する
  4. 変化に適応し、自ら変革し続ける
  5. トップの器を大きくし続ける

基本的には多くの方がご存知でもあるJリーグ設立、Bリーグ設立に関するお話でしたが、これらの点に沿って話された内容を簡単に書き留めておこうかと思います。

まず1点目の「可能性を信じ志を高く」です。
当時、古河電工に勤務されていた川淵氏に電話があり、サッカーリーグのプロ化を突然任されたそうです。
最初は、プロ化なんてできるわけないだろ!と左遷のような異動に怒りを覚えたそうです。
しかし、次第に、自分自身もお世話になったサッカー界に貢献する!サッカー界を何とかする!という強い信念が芽生えてきたとのこと。

当時のサッカー界をご存知の方は少ないのかもしれませんが、専用のスタジアムなんて持っていないような環境からのスタートだったわけです。
当然のように試合を観に来る観客なんてまばら。
トヨタカップ(現、インターコンチネンタルカップ)で、南米とヨーロッパNo.1のクラブチーム対決の時に盛り上がるくらいだったでしょうか。
テレビ中継はされていたものの、今ほど注目はされていなかったかもしれません。

プロ化するには観客を動員できなければならない、観客を集めるには屋根付き芝のグラウンドというスタジアムが必要、ということで、施設から準備していかなければならないという、まさにゼロからのスタートだったわけです。

エピソードや詳細は省きますが、絶対にプロ化を成功させるという強い信念を貫き、全国を奔走し、今のJリーグに至った訳です。

まさに「可能性を信じ志を高く」を心折れることなく邁進した結果なのだと。

2点目の「仲間を巻き込み組織を作る」について。

Jリーグ設立の際は、例え相性が合わなそうだと感じても、能力のある人を活用し組織化したそうです。
Yesマンを揃えてもダメ。自分に意見・批判を伝えてくれる人が必要。
このようなポイントを挙げられていました。

自分が出した色々なアイデアを具体化できるスタッフを集めることがポイントで、川淵氏はJリーグ設立の際も、Bリーグ設立の際も、スタッフに恵まれていたのはラッキーだったとおっしゃっていました。
ラッキーであったのか、そういったスタッフが集まったのは必然であったのかは分かりません。

VEの5原則に「チーム・デザインの原則」という原則があります。
各分野の専門家の知恵・経験・技術を結集してプロジェクトを推進するべき、という原則です。
VE活動に限らず、汎用的な原則だと思います。

そして3点目の「勝ち続ける戦略を構築し実行する」です。

川淵氏は、Jリーグ、Bリーグとプロリーグの設立に尽力されました。
しかし、講演内容全般を通してですが、プロスポーツ・プロリーグという範囲に留まらず、各スポーツ界の強化・発展に汎用的に適用できるアイデア・方法であったと感じました。

特にプロスポーツにおいては、観客動員数が全て、というのが川淵氏からの意見でした。
観客動員数を増やすために、施設(アリーナ・スタジアム等)が必要不可欠になってもきます。

先ほどJリーグのスタジアムについて書きましたが、15,000名が入る屋根付きスタジアムが必要であり(8割程度の集客でも採算が取れる見込みであった)、行政、全国の地自体にスタジアムの整備を説得して回ったそうです。

そして、ただ単に地方にスタジアムを用意するだけでなく、収益化できた際には、地元に還元し地域の活性化を推進するという方針で、説得して回ったとのことでした。

Bリーグ設立の際にも同様で、リーグの試合を開催可能な体育館は全国で20箇所程度しか存在しなかったそうです。
各クラブチームが市長と交渉を重ね、1ヶ月で20のクラブが許可を取って来れたそうです。
川淵氏が参画するまで、誰もそのような手段を取る人も、取ろうというアイデアも出なかったようです。
川淵氏は、「おれよりバスケのことを考えているヤツはいるのか!!」と各クラブチームを集めて、怒鳴りつけたそうです。
(ここまでマウンティングされて、手を挙げられる人はいないかと思いますが。。。)

協会も、それまでの固定観念に縛られ、もうダメだ、うまく進められない、そんな諦めムードになっていたのかもしれません(これは話を聞いていての私の推測ですが)。

4点目、「変化に適応し、自ら変革し続ける」

ここでは、「不易流行」という松尾芭蕉の言葉を引用されていました。

不易とは、いつまでも変わらないこと
流行とは、時代に応じて変化すること

まず普遍的な基礎を学び身に付けることが前提であり、事態の変化に沿った新しさも追い求めないと、陳腐でつまらないものになってしまう、という言葉です。

周囲の環境は常に変わり続けるわけで、いつまでも変わらないままでは進歩はあり得ません。
特に企業の経営層の方には、同じような思いを抱えていることと思います。

5点目の「トップの器を大きくし続ける」ですが、ここまでの講演で多くの時間を使ってしまったため、「世界の情勢」「国際感覚を磨く」ことに注力しなければならない、という言葉だけで終わってしまいました(笑)

川淵氏からは、日本のスポーツ界は、まだまだ大きな可能性を持っている、もっと活性化していけるはず、という言葉がありました。
協会や連盟などのスポーツ団体の破綻したガバナンスを始めとし、変革をしようとしない中ではなおさらだと考えています。

コンテンツが良ければ必ず人を集めることはでき、良いコンテンツに仕上げる手段は無限に広がっていると考えています。
私が専門とするVEも、その手段の構築に役立つはずです。

また、ラグビーW杯、オリンピック・パラリンピックについても、開催後が重要であると述べていました。
これらのイベントをピークにするのではなく、そのピークをポシャらないように、ガバナンス・財務面の確実な整備が急務であるとの考えを示されていました。

今後の日本のスポーツのプロ化についての情報の紹介・意見を聞けました。

ラグビーでは2021年にプロ化に向けた準備を進めていますが、スタジアム・アリーナの準備が全く間に合っていないようです。
サッカーとの共用も案として出ているようですが、ラグビーW杯を観ている方はお分かりのように、サッカーではあそこまで芝生が痛むほどのゲームはありません。
逆に、サッカーはあれた芝生のグランドを使用することになります。
この点が現在の課題になっているようです。

バレーボールもプロ化に遷移していくのではないかとも言われることが多いですが、川淵氏によると、国内での運営を全て人任せにしており、協会が何もしていない現状のままでは、プロ化は難しいのではとの意見がありました。

この辺りの課題をクリアしていけば、バレーボールでは価値あるコンテンツを提供することが十分に可能であり、幸いに男子・女子ともに若手が育ってきています。
強力なリーダーシップを発揮し推進することができれば、プロ化は可能なことではないかと考えます。

また、最後に、子供たちに大切なこととして、
試合の楽しさを伝えること!
Cheerful Coaching!
Play enjoy!
という考えを示していました。

日本のアマチュアスポーツの問題・課題は様々ですが、プロ・アマチュアの壁をうまく取り払う、もしくは取り払うのではなく別の手段で、縦割りの現状を解決しなければ、将来のアスリート育成・人気アスリートの輩出は難しいと考えます。

日本では、面白ければ料金が高くても良い、という考え方が馴染まないのも、文化面での課題の1つだと述べられていました。
しかし、会長が変わってからのフェンシング協会の変革などを見ていると、それまでのチケット代の2倍、3倍でもすぐに完売するほどなので、コンテンツとPR次第なように思います。

VEの世界では、もちろん費用が安いことに越したことはありませんが、費用が増したとしても、それを上回るだけの機能(ファンクション)を達成すれば、価値を向上することができるというように考えます。
スポーツビジネスの世界でも同様に考えられるはずです。

この点なども踏まえ、スポーツという領域にもVEを展開して、その価値を向上させていくことは、大きな効果を生み出すことができるという確信を改めて強く持ちました。

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